
1年かけて決断したIターン。あれから6年、「いいことばっかり」と実感する日々。
西部電機株式会社
北 智弘さん
プロフィール
兵庫県出身。大学院修了後、ホテルに入社し、人事を担当。ホテルの建て替えとブランドの立ち上げを伴う大規模プロジェクトにも携わる。北九州出身の奥様と子どもをもうけることを考え始めたことをきっかけに、2020年4月、奥様の地元である北九州へIターンし、西部電機株式会社に入社。入社後は教育・採用・労務など人事全般を担当し、2022年4月に人事課長に就任。
はじめに
インタビュアー
Iターン転職から6年が経ちましたね。率直に、Iターン転職をしてみてどうですか?
北さん
すごく良かったと思っています。一言で言うと、いいことばっかりで。
困ることを唯一挙げるとすれば、通勤に使う電車の路線が一つしかないことですかね。台風や雪などで遅れたり止まったりすると、東京のような迂回経路がないので、身動きが取れなくなるんです。そこは困りますね。
ただ、本当にそれぐらいで、あとはいいことばっかりでした。
インタビュアー
いきなり結論が出てしまいましたね(笑)。そこに至るまでのことを、今日は詳しく伺わせてください。

東京ではイメージできなかった子育てを、北九州で
インタビュアー
東京から北九州に移り、特に良かったと感じるのはどんなところですか?
北さん
一番は子育てですね。当時はまだ子どもがいなかったんですが、妻と「そろそろ子どもをもうけたいね」という話をしたときに、東京で子育てをする姿が、どうしてもイメージできなかったんです。
私は兵庫県出身で、妻は北九州出身。どちらかの地元に移住しよう、というところから話が始まったんですが、実際に北九州へ来て子どもが生まれてみると、子育てには良い環境だと感じますね。
近くには自然があって、少し電車や車で移動すれば、都会的な場所にも行ける。北九州市の子育て支援もしっかりしていて、すごく子育てがしやすいです。
インタビュアー
奥様にとってはUターンになるわけですね。ご夫婦で移住を考え始めたきっかけについて、もう少し詳しく聞かせてください。
北さん
きっかけはいくつかあったと思っています。一つは年齢ですね。子どもをもうけることを考えたときに、当然、私の年齢もありますし、妻の出産の年齢もありますので。
もう一つは、前職のホテルで建て替えのプロジェクトに携わっていたことです。ホテルの建物を一度全部壊して、新しい建物とブランドを立ち上げるという、4~5年がかりのプロジェクトだったんですが、それがちょうど一区切りついたタイミングでした。
私たちの年齢と、仕事の区切りがちょうど重なって、妻と話していても「そろそろいいんじゃないか」と。本気で移住を考え始めたのは、その頃ですね。
インタビュアー
東京でお子さんを授かってから、移住について考えるという選択肢はなかったんですか?
北さん
そういう話もありましたけど、そのあたりは夫婦お互いの意向も結構あって。性格上のことだと思うんですが、仕事は仕事できっちり終えて、その次は出産・子育て、というように、フェーズを切り替えていくタイプだったんです。
なので、まず仕事はここで終わり。その次に移住、ということで、二人とも退職して、まず北九州に来ました。そこから出産、子育てというふうに、結構フェーズを切り替えていったところがあります。
本当は、出産してからとか、仕事が決まってから移住したほうがいいんでしょうけど、私たちは出産する前に移住を決めましたし、転職先が決まる前に、前職には退職を申し入れていました。
インタビュアー
それはなかなか、人にはおすすめしにくい動きですね。
北さん
自分で自分の首を絞めるような……今思うと、思い切ったことをやったなと思いますね。ただ、そういう考え方の夫婦だったので、そのやり方を選びました。
自分の地元ではなく、妻の地元へ――1年かけて出した結論
インタビュアー
ご結婚されたときから、「地元が違うので、いずれどちらかに帰るとしたらどうするか」という話はあったんですか?
北さん
私個人の考えではありますが、長男なので、いつかは実家のある兵庫に帰るものだと思っていたんです。
なので、実際に移住や転職について夫婦で話し始めたときには、正直、意見がぶつかることも結構ありました。親に話せば、当然、兵庫に帰ってくるんだろうというスタンスでしたし。
転職先がどうとか、処遇がどうとかいうことよりも、夫婦二人がどこで暮らすことに納得できるのか。そこに一番時間をかけました。決着がつくまで、1年ぐらいかかりましたね。
インタビュアー
それでも、最終的に北九州を選んだのはなぜですか?
北さん
一つは、子育てをするなら、私の両親よりも妻の両親が近くにいたほうがいいだろうと。友人に聞いても、みんな口をそろえてそう言っていました。
実際、私の友人にも奥さんの地元へ移住している人が結構多くて、自分の実家の近くに住んでいる人は、逆にほとんどいないぐらいだったんです。
友人たちを見ていても、妻といろいろ話していても、自分が子育てをイメージしてみても、きっと北九州がいいんだろうなというのは、頭では分かっていました。
ただ、親の気持ちや、自分の中にある「長男だから」という思いの部分で、なかなか納得できないところもあって。そこを整理するのに、結構時間がかかりましたね。
インタビュアー
ご両親に納得してもらうのは、長男だと余計に大変ですよね。
北さん
そうですね。最初に話したときは、かなりびっくりしていましたし、「なぜ神戸ではなく、北九州なんだ」ということも言われました。親子の縁がどうなるかなと思うぐらい、追い詰められた時期もありましたね。
ただ、直接会って話をして、何とか理解してもらいました。転職先がきちんと決まってから話しに行ったので、安定した仕事があるということも、少しは説得材料になったのかなと思います。
それに、私は昔から、親にあまり相談しないタイプだったんです。進路や進学先、就職先も、ほとんど相談したことがなくて。大事なことを親に相談するタイプじゃなかったので、「またか」という感じで、らしいと言えばらしいな、と最後は納得してもらったんだと思います。
インタビュアー
移住から6年が経ちましたが、今、ご両親との関係はいかがですか?
北さん
わだかまりがまったくないと言っていいのか、それは私が感じていないだけかもしれませんが、今はそれぐらい良い関係でいられていると思っています。
去年は両親を九州に呼んで一緒に旅行しましたし、今年も11月に子どもの七五三があるので、また来てもらって、一緒に旅行しようと計画しています。孫に会えるだけでも、やっぱり嬉しそうにしていますので、そういう形で親孝行していけるかなと思っていますね。
妻の両親にも、結婚した頃からずっと、すごく良くしてもらっています。今も私と妻は二人とも正社員で、フルタイムで働いていますので、近くで支えてもらえることには、ものすごく感謝しています。
妻の言葉で気づいた、東京でのハードワーク
インタビュアー
東京で働いていた頃、「そろそろきついな」と感じることはありましたか?仕事でも、生活環境でも。
北さん
性格上のことなのかもしれませんが、私自身は、仕事に対してあまりネガティブになることはなかったんですね。
ただ、妻からすると、やっぱり結構ハードワークだったようで。ホテルのリニューアルプロジェクトと重なっていたこともあって、毎日22時、23時に帰ってくるような生活だったので、妻からは心配されて「ちょっと考えたほうがいいんじゃない」と言われていました。
私自身は、そういうものだと思っていましたし、自分がやりたくてやっていることも結構あったので、それほど大変だとは感じていなかったんです。ただ、妻から言われて、確かにこれはちょっと働きすぎなのかな、と感じる部分はありましたね。
仕事そのものでいうと、結婚直後に管理職になったんですが、なってからは、やっぱりすごく大変だと感じることが多くて。思い通りにいかなかったり、結構孤独を感じたりする部分もあって、管理職って大変なんだなと思っていた時期でもありましたね。

入社2年で責任者へ――中途入社の壁はなく、任される仕事と役割が広がった
インタビュアー
入社してから、仕事や役割はどう変わっていったんですか?
北さん
前職から引き続き、人事職として入社しました。最初の2年ぐらいは、教育や採用、労務など、結構いろんなことを担当させてもらいました。
入社して1年ぐらい経った頃に、人事制度や教育体制、教育体系を見直すことになって、それを中心にやらせてもらったんです。そのあたりを成果として認めてもらって、2022年4月から人事課長になりました。
いろんなことを任せてもらったり、分け隔てなく評価してもらえたことは、ありがたかったですね。
インタビュアー
中途入社なのに、ということですか。
北さん
そうですね。プロパーだからとか、中途だからというのはあまりなくて。ちゃんと根拠を立てて、ロジックで説明できれば話が通る会社だと思います。
そういう意味では風通しの良い会社なので、とてもやりやすいですね。
入社時に下がった年収は、6年で転職前の1.5倍以上に
インタビュアー
転職前の年収と、入社してから現在までの推移は、どんな感じでしょうか。
北さん
転職した当初は、若干下がりましたね。転職前に比べて、8割、9割ぐらいだったと思います。
ただ、もともとホテル業界は、それほど平均年収が高い業界ではなかったので、世間一般に言われるような、東京から福岡に来てガクンと下がった、という感じではなかったですね。
そこから現在でいうと、転職前に比べて1.5倍以上には上がっています。転職するときには下がる覚悟でいましたし、下がるものだと思っていたんですが、5年、6年経ってみると、逆に1.5倍ぐらいになったので。そういう意味でも、転職して良かったなと思いますね。
インタビュアー
それは良い転職ですね。
北さん
たまたまですけどね。今、会社の業績が良いということも、もちろんありますし。

満員電車に揺られる日々から、家族で出かける週末へ
インタビュアー
東京にいた頃は、職場からご自宅までどれぐらいかかっていたんですか?
北さん
1時間10分ぐらいですね。電車の乗り換えもありましたし、ずっと立ちっぱなしでした。
インタビュアー
今はいかがですか?
北さん
今は50分から1時間ぐらいです。時間としてはもちろん短くなっていますし、電車にも座れますから、ストレスは全然違いますね。同じような時間でも、満員電車に揺られるのとは違います。ただ、社内では通勤時間は結構長いほうですね。
インタビュアー
転職前にすでにご結婚されていて、北九州に来てからお子さんが生まれて、生活のパターンも変わったと思います。日々の暮らしは、どんなふうに変わりましたか?
北さん
まず、働き方自体が変わりましたね。もちろんメリハリをつけてというところはあるんですが、子どもが生まれてからは、幼稚園の送り迎えを妻と交代でやったりもしています。
前職のように、毎日朝早くから夜遅くまで働く生活とは全然違って、今はもう少しメリハリのついた働き方ができています。家族で過ごす時間も必然的に増えましたし、そういう意味では、生活は全然違いますね。
インタビュアー
お休みの日は、どんなふうに過ごしているんですか?
北さん
近くに自然の中で遊べる場所がたくさんあるので、家族で車に乗って、一日遊びに行くことが多いですね。
海とか山はもちろんですし、九州には見どころがたくさんあります。先週は長崎に旅行しましたし、五島列島に行ったこともあります。九州だけじゃなく、山口や下関あたりにも、子どもが遊べる場所がいろいろあります。東京と違って、そういう場所に車で結構簡単に行けるのは、こちらに来て良かったと感じるところですね。
インタビュアー
そういう意味でも、今の暮らしの満足度は高いですか?
北さん
高いですね。夫婦共に、満足度は高いです。
インタビュアー
最初におっしゃった「いいことばっかり」という言葉の背景が、よく分かりました。今日は率直なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
北さん
こちらこそ、ありがとうございました。