
Iターン転職で、仕事も暮らしも広がった。福岡で得た、「地域のために働く」という手触り感。
株式会社西日本シティ銀行
中西 俊介さん
プロフィール
和歌山県出身。三井住友銀行を経て日本銀行に勤めたのち、奥様の地元である福岡へIターン。2021年10月に株式会社西日本シティ銀行に入行。入行後は主としてALM関連業務に携わり、現在は主任調査役として銀行のリスク管理全般の統括を担っている。
はじめに
インタビュアー
Iターン転職から、まもなく5年ですね。率直に、今はどんなふうに感じていますか?
中西さん
私は地元が和歌山で、福岡は個人的には縁もゆかりもない土地です。妻が福岡出身だったということで、福岡を選びました。
とはいえ、前職で北九州市に1年半くらい勤務していたことがあります。その後も、住んだわけではないんですが、福岡で開催されたG20という国際会議の担当になったので、半年くらい行ったり来たりしていました。場所としては、以前からそれなりによく知っているところではあるんです。
Iターン転職をしてみての感想は、公私ともに、自分が想像していたよりずっと充実しているな、ということです。

仕事後も休日も、職場の人との距離が近くなった
インタビュアー
まず、プライベートの面ではどんな変化がありましたか?
中西さん
働いている時間は東京にいる頃とそれほど変わらないんですが、そもそも福岡はコンパクトな街でもあるので、仕事を終えた後、そのままプライベートに入っていきやすいんですよね。
いい意味で、プライベートでも会社の人との付き合いがあります。会社のメンバーで共通の趣味を持っていれば、休みの日も一緒に楽しむ。たとえば人事部長とは共通の趣味がランニングなので、一緒にランニングサークルを立ち上げて休みの日に走ったり、ゴルフが好きな方がいれば、一緒に連れて行ってもらったりもしています。
東京にいた頃は、休みの日に職場の人と会うことはあまりありませんでした。でも、こちらだとそれが普通の感覚なんです。ウェットだから嫌だという人もいるかもしれませんが、自分としては、そういう関係がとても心地いいなと感じています。
インタビュアー
福岡に来てから、新しく始めた趣味もあるんですか?
中西さん
趣味は増えましたね。東京でも走ることには興味があったんですが、本格的に走るようになったのは、こちらに来て、同じ職場でそういうのが好きな人に誘われてからです。ゴルフも同じです。
東京と比べて、気質もそうですし、お互い物理的にも近い距離に住んでいるので、一緒の趣味を持つ人が集まりやすいと感じています。そういう意味でも、生活は充実していますね。
東京を離れて、仕事の幅と視野が広がった
インタビュアー
福岡にIターンしたことで、東京で働いていた頃と比べて、何か失ったと感じることはありますか?
中西さん
こちらに来る前には、もともと働いていた東京の組織のほうが、専門的な仕事ができるのかなと思っていたんです。
でも実際には、仕事の質が落ちるとか、求められるクオリティが落ちるということもなく、かえって業務の範囲は広がりましたし、求められる深さも増しました。
自分の能力開発という点でも、こちらに来てからのほうが、スピードが上がったんじゃないかという気もしています。地域や職種柄、地方だからここまでしかできない、ということもあまりないのかなと。ですので、何かを失ったと感じることは少ないですね。
インタビュアー
業務の範囲や深さが増したのは、どういう違いがあるからなんですか?
中西さん
たとえば、前の職場だと10人ぐらいでやっていたような仕事を、今は2~3人でやっていたりします。この規模の企業にしては、一人ひとりに対する裁量の与え方がものすごく大きいんです。初めはちょっとびっくりしました。
ただ、実際に取り組んでみると、ある部分だけを担う仕事だと見えないところが、全体を任されることで自然と見えるようになり、視野も広がるんだと感じました。
どこまでできるかはその人の能力によりますが、こういう組織では、追求すれば相当いろいろなことができます。それだけ一人ひとりが幅広い知識を持って、全体を見渡しながら仕事を進めなければならないんですが、それは多分、東京の大企業だと、相当上のポジションに行かないと見えない景色なんだろうなと。
そういう面でも、自分は転職して良かったなと思っていますね。

「どこで暮らすのが幸せか」を考え、妻の地元・福岡へ
インタビュアー
福岡を選ぶことについては、どんなふうに考えていたんですか?
中西さん
当然、選んだ理由は、妻の実家があるということが一番ではあります。あえて福岡以外を選ぶ理由があったかというと、それはありませんでした。
それに、小倉で働いたことがありましたし、福岡市内にも何度か仕事で来ていました。街としてもそれなりによく知っていて、こういう生活ができるんだろうな、というイメージをもともと持っていたんです。それも多分、抵抗がなかった理由だと思います。
インタビュアー
実際にIターンで動くとなったとき、ご家族や周囲の方には相談したんですか?
中西さん
これは特殊かもしれませんけど、家族も含め、私の転職についてはあまり誰も気にしていなかったようです。「本当に大丈夫なのか」という心配すらされませんでした。自分が決めたことならそれでいいんじゃないか、ということでしたので、説得などの苦労はなかったですね。
ただ、妻は「本当に東京を離れていいのか」と心配してくれました。「東京に残っても全然いいよ」とも言ってくれたんです。
福岡にIターン転職したことを、妻は今もそれなりに気にしているようです。私が「自分も来て良かった」と口にしても、あまり真に受けてもらえないというか。自分が理由で来たということに、少し負い目のようなものがあるんじゃないかと感じることがあります。
だからその意味でも、新しい職場でしっかり成果を出す、職場に馴染んでいく、そういう姿を見てもらうことが大事だと思っています。言葉よりも、自分の普段の充実感を感じ取ってもらいたいですね。
条件よりも重視したのは、「自分に合いそうか」
インタビュアー
ご結婚以外に、当時の会社を辞めようと思った理由はあったんですか?
中西さん
もともと、どこの会社で働くかということに対して、そんなにこだわりがなかったんです。三井住友銀行、日本銀行、それから日本銀行に在職中に金融庁にも出向しましたが、そうした複数の職場での勤務経験から、どこに行っても発揮できる能力はそれなりにあるんだろうなと感じていました。
特定の能力を発揮してこういう仕事をしたい、というよりは、与えられたポジションで自分なりに工夫して仕事をしていきたい。だから、どこの会社で何の仕事をするかは、そこまでこだわりはありませんでした。転職すること自体にも、あまり躊躇はなかったですね。
むしろ、新しい地域に行って新しい仕事ができるという意味で、自分でワクワクしながら転職活動をしていました。
インタビュアー
転職先を選ぶときに、重視したのはどんな点でしたか?
中西さん
今回の転職でいけば、とにかく福岡に長く住み続けられることでした。ですから転職先としては、福岡の地場の企業、市役所、県庁などを考えていました。
あとは、雰囲気も大切だと思っていました。実際に働いてみないと本当のところは分からないとは思うんですが、面接をしていただく人たちの雰囲気が合えば、もうそれで決めようと最初から思っていました。つまり、人ですね。
条件だけを見ていると、本当はここよりいい会社がいっぱいあるんじゃないかと、いつまでも決められないような気がするんです。私は割と直感的に決めるほうですので、自分に合いそうかどうかを重視しました。
インタビュアー
福岡で暮らす場所は、どうやって決めたんですか?
中西さん
ある程度福岡の街を知っていたこともあり、最終面接のタイミングを利用して下見をしました。その時点で、この辺のこういうところに住もう、というイメージができていたんです。
ですので、内定をいただいてから1~2週間くらいで家も決まっていましたね。住む場所も、特に福岡だと選択肢が多いので、細かく見ていくといつまでも決まらないなと。ざっと回ってみて、この辺が良さそうだというところを直感的に選んだ、という感じです。

暮らしの幅は広がり、収入も前職水準に近づいた
インタビュアー
東京にいた頃と比べて、暮らし方にはどんな変化がありましたか?
中西さん
福岡はそれなりに都会ですが、車社会です。東京にいた頃はまったく運転していなかったんですが、こちらに来てあらためて教習所に通って、20年来のペーパードライバーを脱しました。
すると、行動範囲がかなり広くなりました。日帰りで熊本や長崎、大分に行ったり、週末であれば鹿児島や宮崎まで足を延ばしたりもします。電車中心の移動で、近場で済ませるという東京での過ごし方から、行動範囲も、できることも広がってきたなという感じがします。
あとは、妻に言わせると、東京にいた頃は歩くスピードがものすごく速かったそうで。それを考えると、東京の生活は多少せわしないところがあったんだろうなと感じます。今は多少のんびりできているようですし、ストレスは少ないんだろうなと思います。
ただ、よく満員電車が嫌で東京から離れたいという話を聞きますが、私はそこまでのストレスはなかったかなという気もします。福岡もそこそこ電車は混んでいますしね。特に朝の通勤時間帯は。
インタビュアー
収入面はどうでしたか?東京から地方への転職では、どうしても収入が下がることもありますよね。
中西さん
下がりますね。入行時で3割ほどのダウンでした。ただ、そこから約5年で、前職の水準にあと少し、というところまでは戻ってきています。まだ及んではいませんが、だいぶ近づいてきた感じです。
ただ、妻も私自身も、収入には本当にそんなにこだわりがないんです。もちろん、もらえるに越したことはないですが、それが上がる、下がるということは、ほぼ気にしていません。もちろん、そこは人それぞれではあると思うんですが。
福岡のために、手触り感をもって働ける
インタビュアー
メガバンク、日本銀行を経て、今は地方銀行で働いていますが、実際に働いてみてどうですか?
中西さん
おそらく、地方といってもそれなりの規模だから、というところもあるのかもしれませんが、やはり、地元のために仕事をしているという感覚を持ちやすいところが、非常にいいなと感じています。
東京の企業だと、地域のためにという意識は、多くの人が持ちにくいような気がします。でも、こちらだと、福岡のために仕事をするという意識が非常に持ちやすいですし、仕事の成果もそこに直結しやすい。それが多分、メガバンクと大きく違うところだと思います。
日本銀行ももちろん、日本経済や金融システムのためにという使命感を持ってやっているわけですが、少し抽象的というか、対象が少し大きすぎるんですよね。それに対して、地元のために手触り感を持って仕事ができるというところが、非常にいいなと思っています。
仕事に対してそういう手触り感や、やりがいを求める人にとっては、地域で働くということは一つの良い選択肢になるんじゃないかな、と思っています。
インタビュアー
お話を伺っていると、暮らしだけでなく、仕事の幅や深さ、地域のために働く実感まで含めて、Iターンして良かったということですね。
中西さん
そうですね。公私ともに、想像していた以上に充実していますし、仕事の面でも何かを失ったという感覚はありません。福岡に来て良かったと思っています。
インタビュアー
Iターン転職後の率直なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
中西さん
こちらこそ、ありがとうございました。