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福岡への思いを原点に。人を育て、地域を育てるVCへ。

株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ
代表取締役社長 松延 享朋

更新日:2026年6月24日

1988年、九州大学法学部卒業後、株式会社福岡銀行に入行。営業店勤務を経て、総合企画部、個人営業部(現:営業統括部)などで企画業務に従事。ソリューション営業部長、個人金融サービス部長、熊本銀行執行役員営業推進部長などを歴任。2022年に株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ取締役常務、2024年に取締役専務に就任。2026年より代表取締役社長に就任し、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

金融の力で、好きな福岡の街を支えたい──企画畑を歩んだ銀行員時代。

福岡の街が好きで、地元に残りたい。その想いから、1988年(昭和63年)に福岡銀行へ入行しました。

当時は金融が非常に好調だった時代です。法学部出身の文系だったこともあり、「金融面で福岡の街を支えたい」という気持ちで銀行を選びました。同級生にも、メガバンクを含めて金融機関に就職した人間が多かったですね。

最初は支店勤務で、福岡市内の2か店を経験しました。30歳の頃に総合企画部へ異動となり、男性行員としては一番下からのスタートでした。支店の活気ある空気とは打って変わって、鉛筆を落とすと部屋に響くくらい静かなフロアで、当時はまったく違う世界に連れてこられたような感覚でした。

総合企画部には9〜10年在籍しました。プロジェクトが立ち上がると現場に出て、企画から実行までを担うのですが、私もいくつかのプロジェクトに参画し、最終的にはクレジットカードのプロジェクトを担当しました。

その後は個人営業部(現在の部署名は営業統括部)で、クレジットカードのほか、住宅ローンや消費者ローン、資産運用まで、リテール周りの商品企画に6年ほど携わりました。45歳の頃にはグループの親和銀行(現 十八親和銀行)へ出向し、佐世保で営業推進部の副部長を務めました。

さらに人財開発センターという研修部門で3年ほど人財育成に携わった後、50歳で柳川支店の支店長に。本部のフロント部隊であるソリューション営業部を経て、執行役員営業推進部長として熊本で2年勤務し、福岡に戻ってFVPに赴任しました。

振り返ると、20年連続で本部にいた人間はそう多くありません。「銀行員という仕事をずっとやってきた」というよりは、企画の仕事を歩んできた──同期と比べても、少し違うルートだったのかなという気はしています。

「思いをしっかり持てば、絶対に実現する」――新規事業に携わって得た学び。

キャリアの中で一番印象に残っているのは、やはり個人営業部でのクレジットカード事業です。

銀行の仕事は基本的に行内で完結しますが、クレジットカードは提携カードを発行するため、社外のパートナーと一緒に仕事をしました。その方々とは、今もスタートアップ投資でお付き合いが続いています。

新たなカードを発行するという新規事業の立ち上げは、第二創業のようなものです。新たなシステム構築のための投資やPRコストも必要で、当然最初は赤字。それを黒字化していくための道のりは、簡単ではありません。最初からうまくいくことはない中で、どうすれば成功に近づくのかを考え続けた経験は、すごくためになっています。

こうした経験から学んだのは、「思いをしっかり持っていれば、絶対に実現する」ということです。

現在携わっているスタートアップ投資も、すぐに答えが出る仕事ではありません。何年もの時間をかけ、その間は辛抱しながら、出資者(福岡銀行)に対して説明を尽くしていく必要がある。昔培ったものが、今まさに生きていると感じています。

銀行とは「似て非なる」世界――プロパーの声を大事にする組織へ。

FVPに来て最初に分かったのは、「自分が何も知らない」ということでした。

初めて聞く言葉が社内にたくさん飛び交っている。何も分からない人間が、銀行員の感覚をそのまま押し付けるのは違うだろうと思いました。銀行のグループ会社というのは、どうしても銀行員の感覚でグリップしたがるものです。しかし、ベンチャー投資の本質を分かっている人間は、おそらく銀行にはほとんどいない。だからこそ、プロパー社員の声を大事にして、きっちりバランスを取った組織にすべきだと考えてきました。

当社は銀行出身者とプロパー社員が一緒に働く組織です。その中で、銀行があまりやったことのないベンチャーキャピタルという業務をグループ会社として担う以上、業界のことを分かっている人間を社内にしっかり置くことが極めて重要です。実際、スタートアップ投資を経験したプロパー社員がコーポレート部門を担っていることは、当社の大きな強みになっています。

一般的な銀行融資は「相対(あいたい)」の関係で、目の前に対立構造が生まれがちです。しかしエクイティは違います。お互いがハッピーになれる、「向き合う」のではなく「横にいる」関係なんですね。

同じエクイティでも、事業再生のように主導権を握って事業を変えていく投資は銀行の得意分野ですが、スタートアップ投資はマイノリティ投資であり、サポートしながらIPOまで長い時間そばに寄り添う仕事です。似て非なるもの──むしろ逆のものだと言ってもいい。だからこそ、その世界を知る人間とともに組織をつくっていくことが大切なのです。

人を育てる組織へ──チームでのOJTへ。

社長就任にあたって一番大きく考えているのは、人財育成ができる組織にすることです。

経験者の外部採用は非常に難しくなっています。だからこそ、未経験者や少し経験をしたぐらいの人を、自らの手でキャピタリストに育てていく組織体にしたいと思っています。

もともとこの業界は「師弟制度」と言われ、パートナーの背中を見て育つ世界です。当社では現在、2名のパートナーの下にメンバーを配置し、OJTができる体制を整えました。これにより、育成の質は以前と比べて格段に上がっています。

2023年頃までは、キャピタリストが横並びで、一人ひとりが経営陣と1対1で向き合う体制でした。誰も教えてくれない環境でかなり苦労したと思います。

今は経験豊富なパートナーに委ね、OJTで指導を受けることで、メンバーの成長スピードは確実に上がりました。

今後は、他のVCに出向しているメンバーの学びも取り込みながら、初期育成プログラムのようなものを社内で整備していきたいと考えています。

ファンドの規模も、リスクアセットの制約はありますが、大きくしていきたい。大手金融グループが100億円を超える規模のファンドを相次いで立ち上げる中、当社も現在100億円のファンドを運用しています。規模の拡大に伴ってキャピタリストも増やし、しっかりやっていける組織にしたいと思っています。

東京での成功を、地元・福岡に還元する。

現在、当社の投資の6〜7割は東京、地元は20〜25%程度です。全国のスタートアップの分布から考えれば自然な構成ではありますが、やはり地元のスタートアップをしっかり育てていくことが、私たちの本質的な役目だと考えています。

幸い、福岡はありがたいことに、他地域から人を惹きつけられる街です。人口も増え続けており、優秀な人財にとって魅力ある要素がこの街にも、そして街の中の企業にも揃っている。これは私たちの大きな強みです。

だからこそ、東京でもしっかり成功し、その成功と学びを地元に持ってくる。私たちが機能を果たしていけば、地元スタートアップへのサポートはもっと厚くできるはずです。そこをしっかりやっていきたいと思います。

ユニークな個性で、チームとして勝つ。

当社に来てほしいのは、個性があってユニークな人財です。

ユニークというのは「面白い」という意味ではありません(笑)。その人なりの専門性を持った人、あるいはそれを志向する人に来てもらいたいと思っています。

育成の仕組みは整えていきますが、この仕事は目の前でリアルにビジネスが動いており、研修プログラムに落とし込めるような話ばかりではありません。目の前で起きていることに対して投資をどうするか──それは自分で学んでいくしかない。だからこそ、自ら学ぶ意欲のある人に来てもらいたいですね。

ただし、ユニークであっても尖っていては困ります。ユニークだからこそお互いを尊敬し合える組織にし、最終的にはチームとして勝っていく。高い能力を自分のためだけに使うのではなく、その知識をみんなに分けてくれる人に来てほしい。

チーム制を導入してから、メンバー同士のディスカッションが活発になり、そうした空気感は着実に育ってきています。半期に1回の社員総会や、月1回の「FVPバー」の実施など、顔を合わせて語り合う場も大切にしています。キャピタリストのインセンティブ体系の見直しなど、みんなが頑張れる仕組みづくりにも、手をつけているところです。

経済情勢を見れば、スタートアップを取り巻く環境は決して良いとは言えません。しかし、そういう厳しい状況にこそ、笑って向かっていけるような組織にしたい。そう思っています。

編集後記

コンサルタント
植田 将嗣

松延社長と初めてお会いしたのは、約2年前です。今回の社長就任にあたって、こうしてお話をじっくりとうかがう機会をいただけたことを、まず嬉しく思います。

前回の吉田社長のインタビューは、FVP社の成り立ちや福岡の街への大きな構想についてのお話でした。今回は少し観点を変えて、松延社長ご自身のキャリアと、これからの組織づくりへの想いをお聞かせいただきました。

特に印象に残ったのは、FVP社員の方々への深い敬意です。銀行融資とスタートアップ投資は「似て非なるもの」、またご自身を「何も知らない人間」と語る社長は、業界を知るプロパー社員の声を大切にし、そして新たにFVPに入社する経験の浅い方々が成長していけるような環境を着実に作っておられます。

これまでも、数名の方が私どものご紹介でFVP社にご入社されていますが、いずれも第一線で活躍され、責任ある立場へと着実に歩みを進めておられます。30名弱のメンバーが伸び伸びと力を発揮されている社内の空気は、まさに松延社長が語られた「ユニークだからこそ、お互いを尊敬し合える組織」そのものでした。

「厳しい状況にこそ、笑って向かっていけるような組織にしたい。」その実現に向け、これからも採用の面からお手伝いさせていただきたい、という思いを改めて強く持ちました。

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